2016年3月17日木曜日

予算委員会-2016年01月19日@会議録その2



190-参-予算委員会-004号 2016年01月19日

○山本香苗君 
 次の質問に入らせていただきたいと思いますが、今、児童虐待、親の病気、また経済的な理由等々で親元で暮らすことができない児童養護施設等で暮らしている子供たち、いわゆる社会的養護が必要な子供たちというのが約四万六千人おられます。年々増えております。総理はこうした現状をどう認識しておられるでしょうか。

 また、併せてお伺いいたしますが、総理の目指す一億総活躍社会におきまして、こうした社会的養護を必要としているお子さんたち、また、その下で暮らしていた若者たちに対してどういう位置付けを考えておられるのでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 児童虐待の相談対応件数は、増加の残念ながら一途であります。その中でも、児童養護施設や里親等に養育される児童が増加傾向にあります。これらの社会的養護を必要とする児童は、生活の知識や経験が不足するなど、自立に時間を要する場合が多いと認識しております。国民一人一人が困難な状況を乗り越えて活躍できる社会をつくるよう、一人一人の希望を阻むあらゆる制約を取り除いていきたいと思います。

 こうした思いから、一億総活躍社会の実現という目標を掲げました。社会的養護を必要とする子供たちやそうした環境を経て育った若者たちを支援し、希望を持って社会で活躍できるようにすることは、まさにその一環と認識をしております。

 今回の補正予算及び来年度予算では、子育て世代包括支援センターの全国展開、そしてまた一時保護所の整備や環境改善、里親の開拓や里親に対する相談支援事業の拡充などを盛り込んだところでございますが、まさに、こうした支援を必要とする、養護を必要とする子供たちに対してしっかりと支援をしていきたいと、自立できるような支援をしていきたいと、こう考えております。

○山本香苗君 私は、この一億総活躍社会を実現する上で最も手厚い支援が必要なのはここだと思っております。

 施設にいる子供たちの多くは、高校を卒業するタイミングで施設から出なくてはなりません。自分の力で生活をしていかなくてはならないんです。約八割が就職という選択肢を選んでおりますけれども、半年もたたないうちに離職をして、高い確率でワーキングプアになっております。社会にとって私は大きな損失だと思っています。

 今回の補正予算案には、総理が御説明いただいたこともございますけれども、施設退所後に就職する場合は二年間は家賃を、そして大学や専門学校等に進学する場合は家賃に加えて生活費月額五万円、これを貸し付けると、そして五年間就業継続すれば返還免除するという事業が新たに盛り込まれております。親や家族に頼れずに、経済的にも精神的にも困難な状況にある子供たちにとっては大きな後押しになると期待をしております。
 
 期待をしておりますが、貸し付けるだけじゃ駄目なんです。貸し付けてほったらかしにしていたら、単に借金するのと全く同じです。ですから、ここは、貸し付けるとともに一人一人を定期的に訪問したり状況をフォローしたり自立をサポートしていく、こうしたアフターケアとセットじゃなきゃ意味がないわけでありまして、是非セットでしっかりやっていただきたいと思いますが、塩崎厚生労働大臣、お願いいたします。

○国務大臣(塩崎恭久君) 

 山本議員には、副大臣としてこの問題、そしてまた児童福祉法の抜本改正について道筋を付けていただいたことを改めて感謝を申し上げたいというふうに思います。

 児童養護施設等の入所児童が施設を退所した後社会で自立できるように、就職や進学に当たって自立支援の充実を図るということが大事だという今御指摘がありました。このため、今、補正予算案において児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業を創設をしたんですが、つくっただけじゃ駄目だと、こういうことで、この事業は児童養護施設退所者等に生活費や家賃相当額等を貸し付けるわけでありますけれども、それに当たっては、児童養護施設等が退所した者に対して行う相談等のアフターケア、そしてNPO法人等が生活就業相談等を行う退所児童等アフターケア事業などと効果的に組み合わせることによって児童養護施設等の退所者の確実な自立というのが初めて図られるようになるはずでございますので、このような支援をセットでやっていかなければならないというふうに考えているところでございます。

○山本香苗君 是非必ずセットで行っていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 アフターケアも大事なんですけれども、私は、もっと大事なのは、施設を出る前にいわゆる自立に向けた生活技能やマナーを身に付ける、本人に自立への強い自覚を持たせることが必要なんだと思っております。しかし、いろいろ調べてみますと、こうした取組というのは実は余りなされておりません。十分実施されておりません。そのために、就職しても本当にささいなことでつまずいて仕事を辞めてしまう、また、実際どういう仕事に就いていいかどうかよく分からなくて、ただ単にホームレスになることを避けるためだけに、住み込みならもう何でもいいと、そういう形で仕事を選んでしまった結果、仕事が続かない、こうした話をよく伺うわけでございます。

 今回、五年間就業を継続すれば返還免除ということでございますけれども、今申し上げたように、施設を出る前、社会に出る前の自立支援というところがしっかり十分なされていないままで社会に出て、仕事を辞めた途端に返還せよというのは余りに酷な話じゃないかなと、新たな借金をつくるだけじゃないかと思うんです。一旦離職しても、次の仕事を見付けるためにちゃんと一生懸命求職活動していますという、こういう場合も就業継続とみなすべきだと、こういう柔軟な運用をしていただくことが必要なんだと考えておりますが、塩崎大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の貸付けの目的というのは、児童養護施設などを退所して就職や進学をする方が安定した生活基盤を築いて円滑な自立を実現するということが目的であるわけでありますから、その趣旨をよく押さえるということがまず第一だと思います。

 厚労省としては、できる限りこの貸付事業を通じた自立が実現できるように、児童養護施設による退所者への支援、先ほどもお話がありましたけれども、NPO法人等が行う退所児童等アフターケア事業による生活や就業面の相談を通じて就業の継続を支援するということがセットで大事だという話でありますが、それとともに、離職してもすぐに再就職するなど就業を継続している場合と同等と考えられるような場合については、できる限りこれは柔軟に扱って、今の目的に沿った制度の運用をしていかなければならないんじゃないかというふうに考えております。

 このことによって貸付対象者にとって過度の負担にならないように、この貸付がですね、ということで配慮して、この事業の趣旨に沿った制度の運用ができるように検討してまいりたいというふうに考えておりまして、先生の、目的をちゃんと踏まえた上で弾力的に運用しろという考え方に私たちも賛同するところでございます。